眠りに生きる子供たち
Netflix映画の『眠りに生きる子供たち』を紹介します。40分の短編です。
概要
過酷な現実から身を守るため、「あきらめ症候群」に罹るスウェーデンの難民の子供たちとその家族に迫ったドキュメンタリー。
第92回アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門ノミネート。
2019年製作 / スウェーデン・アメリカ合作
原題:Life Overtakes Me
あきらめ症候群とは
ここ20年でスウェーデンで難民の子供に発症が確認された病気。別名は生存放棄症候群。
辛い現実から逃げるように、昏睡状態に近い状態になる。数年目覚めないことも。食事や水分を摂らなくなり、鼻腔のチューブから栄養をとり生命を維持する。
祖国での過酷なトラウマや、難民申請許可が降りないという先行きの見えない不安が要因でないかと考えられている。
監督について
Kristine Samuelson
スタンフォード大学で30年間、ドキュメンタリー映画とビデオ美術学修士号の教鞭をとっていた。ITVS*1の理事でもある。ガーナ、南アフリカ、ザンビア、ネパール、ベトナム、オーストラリアでドキュメンタリーのワークショップを開催している。
参考:Life Over Takes Me | Sundance Institute
*ITVS: 公共放送のドキュメンタリー作品に資金を提供するアメリカの企業。
John Haptas
ドキュメンタリー映画編集者。上記のKristine Samuelsonとさまざまなテーマのドキュメンタリーエッセイを制作(パリ観光やベトナム戦争、ホームレス問題など)。長編の"Tokyo Waka"はトロントとシアトルで劇場公開され、ニューヨークではフィルムフォーラムにて上映された。
参考:Life Over Takes Me | Sundance Institute
この2人の他の作品が気になる方は、下記のサイトをチェック。各作品の予告編が観れます。
あきらめ症候群の子供と家族をサポートするには
Oxfam America に募金をする。
Oxfamについて
世界各地の貧困を無くすために活動する、国際NGO団体。
主な活動内容は大きく分けて3つ。
- 地域組織に助成金や技術支援を提供し、その土地で栄養価の高い食料を栽培、衛生的な飲み水にアクセスができるように支援。適正労働・適正賃金の雇用提供。
- 人々を貧困に陥れているシステム、政策、慣行の改善をするためのアドボカシー(政策提言)活動の実施。不平等、気候変動対策、ジェンダー正義、食物連鎖における不公平に取り組み、紛争や災害の生存者の基本的人権と尊厳を擁護。
- 紛争や災害時の緊急救援。
参考:About us | Fighting global poverty & injustice | Oxfam
私からのメッセージ
40分でサクッと観られる短編ではありますが、寝たきりの子供と、過酷な体験を語る家族にショックを受けることもあり得るので、心が元気なときに見ることをお勧めします。
ただし観た後は、世界で議論され続けている難民問題についての意識が変わったり、実際に彼らを支援したいという気持ちが生まれたりするのではないかと思います。
オクトパスの神秘 海の賢者は語る
いまネット上でも話題の「タコのドキュメンタリー映画」を紹介します。
概要とあらすじ
映画製作者のクレイグ・フォスターと1匹のタコの絆の記録を映したドキュメンタリー映画。Netflixで配信中。
クレイグは多忙な仕事に疲れ、心までも病んでしまう。そんな中、彼は幼少期を過ごした南アフリカの美しい海に潜ることを決意する。海中には手付かずの美しいケルプの森があり、彼はその中を探索することによって、日常の嫌なことを全て忘れることができた。
クレイグ・フォスターについて
南アフリカのドキュメンタリー映画監督・カメラマン・プロデューサー。
この1匹のタコとの出会いを経てから、"Sea Change Project "を創設し南アフリカの海の環境保護活動をしている。
海での散策を続け、なんと今までに8種類の新種のエビを発見する。
そのうち1種は彼の名前 "Craig Foster" にちなみ、"Heteromysis Fosteri" と名付けられた。
妻はインド人でドキュメンタリー映画製作者兼環境ジャーナリストの、スワティ・ティヤガラジャン。
登場するタコ
クレイグと心を通わせるメスのタコは「マダコ」。
日本でも食用としてよく知られている。東アジア沿海の熱帯・温帯海域に広く分布。日本の本州以南では『タコ』といえばマダコを指す。寿命は約1年。
撮影された場所
クレイグの家のすぐそばにある海、フォールス湾が舞台。彼は毎日、ケープ半島の大西洋側にあるケルプの森に潜っていた。サイモンズタウン郊外に位置する。
ケープ半島
サイモンズタウン
Sea Change the Project について
代表的なメディア活動実績
・BBCのテレビシリーズ "Blue Planet II" 撮影
・屋外写真展 "Sea Change" で推定100万人の動員
(2021年10月に "Underwater Wild" というタイトルで写真集を発売予定)
・映画 "My Octopus Teacher"
活動をさらに詳しく知りたい方は公式サイトを参照してください。
サイトから募金も可能です。
どこで観れる?
Netflixで配信中。
以上、『オクトパスの神秘 海の賢者は語る』の紹介でした。
友達やめた
概要
生まれつき聾者である今村彩子監督が、友達のまあちゃん (アルペルガー症候群持ち、鬱病の寛解状態)との常識や価値観の違いについて、悩み考え葛藤する姿を映したドキュメンタリー映画。
公開日:2020年9月19日
上映時間:84分
監督・撮影・編集:今村彩子
監督紹介
今村 彩子 (いまむら・あやこ) 監督
名古屋出身/Studio AYA代表
大学在籍中にカリフォルニア州立大学ノースリッジ校に留学し、映画制作を学ぶ。
現在、愛知学院大学で講師をしながら、映像制作をしている。
主な作品に「珈琲とエンピツ」(2011)、「架け橋 きこえなかった3.11」(2013)、自転車ロードムービー「Start Line(スタートライン)」(2016)、ろう・難聴LGBTを取材した教材DVD「11歳の君へ~いろんなカタチの好き~」文科省選定作品(2018)、「友達やめた。」(2020)、「きこえなかったあの日」(2021)がある。
手話と字幕で分かるHIV/エイズ予防啓発動画も制作、無料で公開中。
初めての著書『スタートラインに続く日々』(2019)を出版、Yahoo!ニュースでも取材したことを動画と文章で発信している。
ストーリー紹介
今村監督とまあちゃんは、知り合って2年の友達。監督は、まあちゃんにされて嫌なことがあっても、その行動はアスペルガーから来るものだから仕方がないと考えて、モヤモヤした気持ちを心の中に閉じ込め、大きなストレスを抱えます。
監督は、今まで聾者であるということで、自分は世間ではマイノリティ(少数派)だと思い生きてきました。しかし、まあちゃんからは、ごく一般の「常識」を持っている苦手なタイプだと言われます。
今村監督は、我慢していたストレスが爆発して、まあちゃんと喧嘩する度に、自分の常識を彼女に押し付ていることに気付きます。
私の常識(今村監督)、まあちゃんの常識、どっちが正しいのだろうか?どうしたら2人は分かり合えるのだろうか?そもそも一体何が常識なのだろうか?監督は考え葛藤します。
また自分が正しい、優れているのだという優生思想が、知らずに心に根付いてることの怖さについても触れられています。
どこで観れる?
※2021年4月23日現在の情報
・北海道シアターキノ(6/11のみ)
・埼玉県の川越スカラ座(5/15~28)
映画公式サイトからDVD(パンフレット購入可)が発売されています。
映画監督 今村彩子|Studio AYA Official Web Site